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ネイティブガンダム[リマスター版]
第3回
2007年07月31日(火)
第3話「敵の補給艦を叩け!」
第3話では、サブタイトルにロボットアニメとしては驚きの単語が織り込まれている。そ
れは「補給」という言葉だ。ガンダムの活躍でザクが3機も全損してしまったからには、補給が必要なのだ。戦争とは莫大なる消費であるため、兵士自身を含め
てリソースをどのように配して、どう補給するかが死命を制する。これをロジスティクス(兵站)と言うが、運送業の社名など物流の意味でも使われており、社
会の根幹を支える概念とも言える。また、失われてしまったものは戻らないという感覚は、町が丸ごと破壊されても翌週には復旧しているヒーロー番組とは一線
を画したリアルなもの。同時にガンダムの特徴のひとつでもある「無常感」にもつながっている。
【体臭を放つアムロ】フラウ・ボゥが制服の着替えを持ってきた理由は、アムロの体臭であった。アニメキャラは基本的に「役割を演じる」ものなので、生活をしているときの生理は希薄になりがち。『ガンダム』ではさまざまな隙間にその生理を感じさせる映像を埋めこんでいる。
【ブライトをじらすアムロ】補給中の敵艦を襲撃するか否か。多数決というシチュエーションも異常だが、アムロはその挙手を着替えに引っかけてじらす。ブライトの反応を探るためである。第2話ラストとこのくだりは対になっていて、何かにつけて張り合う2人の関係が随所に折り込まれているのである。
【ミノフスキー粒子登場】ガ
ンダムの世界観のベースとなる架空の粒子。それがガデムの台詞上に登場する。専門用語として聞き流してしまいそうになるが、実は映像にもその影響は明確に
描かれている。戦闘中のモニタ画面上には通信距離に応じてノイズが妨害として入ってくるのだ。だから、この粒子が電波障害に関連したものだということは注
意深い観客にはわかるように示されている。
【太陽を背にした作戦】これは戦闘機同士がドッグ・ファイトを行うときの、一種のセオ
リーを応用したものだ。内向的と言われがちなアムロだが、意外にも周囲をよく観察する能力を持っていることが、シリーズ初期にはよく描かれている。それは
シリーズ後半の「ニュータイプ」の要件である「洞察力」にも結びつくものなのだ。
【旧ザクの登場】パ
プア補給艦自体が老朽化しているという設定がおもしろいが、ガデム艦長の乗るザクもまた旧式である。いわゆる動力パイプを装着していない簡素なザクで、後
にファンには「旧ザク」の愛称で呼ばれるようになる。やられメカのザクを量産兵器として扱ったことがガンダムのエポックメイキングな姿勢だったが、過去か
ら現在へと至る機種の進化を提示することで、時間軸方向にも厚みがつけられているのだ。この時空間を横断する多層的・重層的な「厚み」こそが、「ガンダム
らしさ」である。
【シャアの動揺】ホワイトベースの活動があまりに常識外れなので、さしものシャアも混乱し、激しい動揺を見せ
る。連邦軍の新兵器の高性能はともかく、戦法の未熟さと素人くさい戦い方が彼を悩ませているのだ。「素人が強敵を突破する」というこの部分が実はもっとも
リアルから遠いわけだが、シャアの言葉を借りてその異常さに自己言及しているのである。「観客がおかしいと思いそうなことは、あらかじめ登場人物に先に言
わせてリアリティを確保する」というこの演出作法は、富野由悠季総監督の定番。たとえば「(機械人形に)ヒゲがある」と先にツッコミを入れさせてしまうな
ど、他の作品でもよく見られるものだ。
【潤滑油になるリュウ】第2話同様、帰還したアムロに対してブライトは厳しい言葉をくだ
す。ブライトはアムロに正面を向かず、しかも無意識のうちにリュウ・ホセイの行動の方を甘く見てしまう。そこで怒らずにスルーしたアムロは、思われている
以上に気が利く少年なわけだが、リュウもアムロのそういうところを見込み、人の潤滑油になろうと決意したらしい。こうした「どこにでもありそうな」人間関
係のディテールは、TVシリーズの方にふんだんに見ることができる。
氷川竜介(アニメ評論家)
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