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ビブリオグラフィー・イン・チルドレン

ビブリオグラフィー・イン・チルドレン
第2回
2007年08月16日(木)

講談社編

 今回はオープニング・フィルムにも掲載誌としてクレジットされている、講談社のお話です。講談社のガンダム掲載誌といえば、1981年に創刊された「コ ミックボンボン」が思い出されますが、11月発売号で休刊するというニュースが飛び込んできました。第1回で取り上げた朝日ソノラマの解散も然りですが、 TVキャラクターの出版展開そのものが「寒い時代」へと歩み出しているのではないか……と不安に思えてなりません。

 1979 年度における、講談社のメディア展開はオープニング・フィルムのクレジットが示すとおり、「テレビマガジン」と「たのしい幼稚園」で行われました。「テレ ビマガジン」はグラビア中心の構成で、「たのしい幼稚園」に関しては短編マンガが掲載されたのみとなっています(連載期間は1979年5月号から8月号。 作画は第1回目のみ森藤よしひろ氏、以降はのぐち竜氏が担当)。
 そして、定期刊行物以外となると、この「たのしい幼稚園のテレビ絵本33すごい ぞ!機動戦士ガンダム」のみとなります。「たのしい幼稚園のテレビ絵本」は「たのしい幼稚園のウルトラ怪獣絵本シリーズ」(1970年)を原点として、 1971年から発刊が始まりました。そのラインナップには『宇宙猿人ゴリ』『仮面ライダー』『マジンガーZ』など、1970年代前半を代表する作品が群を 連ねています。ところが、1973年秋に勃発した石油ショックの影響で一度刊行がストップし、1975年よりナンバリングを改めて再スタートしてしまし た。「すごいぞ!機動戦士ガンダム」はその新ナンバーによる、33冊目ということになります。
 この「すごいぞ!機動戦士ガンダム」は第21話のオンエア日にあたる、1979年8月25日に発行されました。実際に店頭に並んだ時期はもう少し早いはずですから、放送が2クール目を過ぎた頃の発売と見て良いでしょう。ちなみに誌面にはザクの他にグフも登場しています。


▲「たのしい幼稚園のテレビ絵本33すごいぞ!機動戦士ガンダム」の表紙は、3種類が確認されている。左から、1979年8月 25日発行の第1刷、1979年11月30日発行の第2刷、1981年発行の第4刷。2刷ではガンダムのカメラアイの下が赤く塗られ、4刷ではシャアの図 版が追加された。その影響で右側のビーム・サーベルを印刷で消していることもわかる。構成・絵は日本サンライズ。当時価格は250円。第4刷は30円を値 上げして280円。

<あらすじ>
 宇宙に作られたスペース・コロニーのジオン公国は地球連邦に戦争を仕掛けました。
「アムロ、ガンダムでちきゅうをまもるのだ」ブライトをせんとうに、ぜんいんホワイト=ベースに乗り込みます(原文ママ)
  しかし、ザビこうおう(原文ママ)の命令を受けたシャア少佐がムサイに乗り、ザク、グフ、ドップを引き連れてホワイトベースに襲いかかります。ガンダムは ビーム・ライフル(絵はTV未使用武器のビッグガン)でザクを倒しましたが、後方からドップが! そこへリュウのコア・ファイターが飛来してドップを撃墜 し、ガンダムは危機を脱します。さらにグフが登場するが、ガンダムはびくともしない。ビーム・サーベルでグフは真っ二つ!!
 ガンダムのあまりのつよさにおどろいたシャアしょうさは、あかいザクにのってにげだしました。「このつぎはまけるものか。おぼえておけ、アムロ」(原文ママ)
「いつでもこい、シャアしょうさ。ちきゅうはかならずまもるぞ」アムロのちからづよいことばにみんなゆうきづけられました。(原文ママ)


▲オープニング・フィルムを想起させるジオン軍の総攻撃。前回で紹介した朝日ソノラマの絵本と同様、シャアはデギンから直接命 令を受けている。また、シャアのヘルメットの飾りが赤い時、ガンダムのアンテナが黄色くなるという「法則」は、ここにおいても健在である。


▲本文ではビーム・ライフルとなっているが、実際に使用しているのはキングレコードのLPジャケットのイラストでおなじみの ビッグ・ガンである。ビッグ・ガンは、『ガンボーイ』の時期には「ビーム・スプレー・ガン」と呼ばれており、メディア掲載時に名称のみ変更されている。


▲ビームサーベルをムチのように揮い、グフを両断するガンダム。おそらく、ビーム・サーベルを振り下ろす有名なアクションポー ズの設定画から生まれた解釈であろう。なお、1979年度に刊行された絵本でグフが登場したものは、本書と「よいこのTVコミックス」(栄光社)のみで あった。この2冊以外は放送開始とほとんど同じ時期に発売されていた可能性が高い。

 物語はかなり子供向けにアレンジはされていますが、基本的な部分は映像作品とそんなに外れてはいないようです。グフを率いる赤いザクとか、むしろ映像作品でも見てみたかった場面ではないでしょうか。
 しかしながら、この本の一番の注目点は巻末の記事ページにあります。題して、「これがガンダムのすべてだ!」です。まずは論より証拠、原文ママでまるごと紹介しちゃいましょう。

 ちきゅうをまもり、ザクやグフとたたかうせいぎのせんし。
 これがさいきょうロボット、ガンダムのすべてだ!
●しんちょう 18メートル 
●たいじゅう 60トン
●スピード うちゅうをマッハ3のスピードでとぶ。
●そうじゅうしゃ じゅうぶんくんれんをつんだアムロがのる。
●ビーム・ライフル あついてつのいたにもあなをあけてしまう。
●ガンダム・ハンマー くさりつきのてつのたまで、てきをなぐりたおす
●ビッグ・ガン 10センチのあつさのこうてつもうちやぶる
●ハイパー・バズーカほう 10キロさきのせんしゃでもはかいしてしまう。
●ガンダム・シールド てきからみをまもるてつよりかたいたて
●ビーム・サーベル ガンダムの一ばんのぶき。ねつこうせんのかたなで、どんなかたいものもきりさく。

……「マッハ3でとぶ」「てつよりかたいたて」とか、ツッコミ始めるとキリがありませんが、本編未登場武器でありながら、当時のイラストには良く書かれていたビッグ・ガンの設定とか、なかなか知り得ない情報が書かれているのも事実なのです。
  これらビッグ・ガンや形状の異なるガンダム・ハンマー(設定書によると「熱線ヒート・ハンマー」と呼ばれています)、スコープの付いたハイパー・バズーカ の出自は作品タイトルが『ガンボーイ』と呼ばれていた頃に描かれた、玩具プレゼンテーション用画稿でした。おそらく、各種武器の決定稿が出来上がるタイミ ングが若干遅れたため、企画用の画稿がメディアに露出してしまったと推測できます。そういった当時の制作状況を類推できるという意味でも、このページは貴 重な資料と言えるでしょう。


▲「これがガンダムのすべてだ!」はセルイラストの他に、森藤よしひろ氏によるカットも挿入されていた。セルイラストは「テレ ビマガジン」1979年5月号の記事より転載。ただし、記述そのものは異なっている。


▲表紙は増刷のたびに変化したが、裏表紙はそのまま使用されている。コア・ファイターの塗り間違いもそのままであった。


▲「たの幼テレビデラックス1機動戦士ガンダム大図鑑」(1982年12月30日発行)。ガンダムのアンテナが白いあたり、明 らかに映画化以降の本である。当時価格490円。同叢書シリーズの第2弾は『大戦隊ゴーグルファイブ』であった。


▲再録イラストを多数掲載。岡崎甫雄氏。関口猪一郎氏、田中愛望氏による「テレビマガジン」掲載のガンダム画報がよみがえる!


▲巻末には最終回のフィルムを元にした「写真まんが ガンダム最後のたたかい」を掲載。実はTVシリーズを元にしたアニメコミックは意外に貴重かもしれない。内容は子供向けゆえに的確かつ簡潔にまとめられて いる。

 さて、「たのしい幼稚園」のガンダム展開のその後を追ってみましょう。『めぐりあい宇宙』の公開も終わり、 『戦闘メカ ザブングル』は終盤にさしかかって後番組の『聖戦士ダンバイン』の情報が出始めた頃、「たの幼テレビデラックス1機動戦士ガンダム大図鑑」が発売されまし た。映像メディアの露出が一通り終わった頃であっても、ガンダムの人気は持続していたことの証左でありましょう。

 これは要するに子供向 けの図鑑ですが、「テレビマガジン」や「たのしい幼稚園のテレビ絵本」のグラビアに使用されたイラストを再録しており、資料としても活用できます。内容は さすがにガンダムブーム後のものですから、映像に準じたものになっていました。むしろ、「テレビマガジン」用に描かれたムサイ、ガウ攻撃空母、ドップ、 ルッグンが宇宙空間に乱舞するイラストに「いろいろな超兵器を1まいの絵に再構成したため、宇宙戦につかわない超兵器もいれてあります」(原文ママ)と、 律儀に注釈まで入れてあるのです。劇場映画公開以降、未就学児童のためのメディアであっても、ガンダム世界における「リアル」が常識とされていたことは、 非常に興味深いものがあります。
(第2回/終)

五十嵐浩司(タルカス)

【プロフィール】
五十嵐浩司(いがらし・こうじ)
ファーストガンダムを朝6時から放送し、あまつさえ26話で打ち切った青森県で生まれ育つ。本業は編集者。
サンライズ作品関連では「ガンプラ・ジェネレーション」(講談社)、「蒼き流星SPTレイズナーコンプリートワークス」(新紀元社)、「ガンダムX」「バイファム」「トライダーG7」「ダイオージャ」「ゴウザウラー」「メタルジャック」「エクスカイザー」~「ダグオン」(以上、DVD解説書)などを手がける。
最新作はファンコレ「ウルトラマンメビウス アーカイブドキュメント」(朝日ソノラマ)。
タルカス所属。

© 創通・サンライズ

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