

| A部長 | このたびはお忙しいなか、お世話になります。 |
|---|---|
| H先生 | ガンダムですよね、昔よく見てましたよ。 |
| C主任 | それは話が早いです。助かります。 |
| H先生 | われわれ研究者の間でも、驚くほど詳しいガンダムファンは大勢いるんですよ。で、今回の話を最初に聞いたとき、てっきりスペース・コロニーの話かと思ったら・・・ジャブローなんですね(笑)。 |
| D職員 | 当社もいずれ、コロニー建設が市場になる時期がくると思いたいですけど(笑)、さすがに現状の技では難しくてですね。スペースシャトルの外注費もよくわかりませんし(笑)。 |
| C主任 | もちろん、コロニーの可能性についてもお話しをお伺いできればと思っています。 |

| A部長 | われわれのストーリーがですね「コロニー実用化のための実験施設であり、コロニー建設の部品製造や打ち上げの基地がジャブローの前身だった」という仮説になっているのですよ。そこで先生がたずさわられた「閉鎖空間」の居住実験についてぜひ、お教えいただきたいのです。 |
|---|---|
| C主任 | 確か先生が実験を行われたのは「CEEF」(*1)という名前の施設ですよね。 |
| H先生 | それが正式名称ですが、われわれ研究者仲間では、“ミニ地球”と呼んでいます。 |
| B主任 | “ミニ地球”でっか。分かりやすいですな。やっぱ横文字よりも日本語やね。 |
| D職員 | まずは実験概要からお教えいただけますか。 |
| H先生 | 延床面積がだいたい300平方メートル。オールステンレス製の施設の中で、ヤギやイネなどを育てて食糧を完全自給し、その施設の中だけで暮らす、というものです。 |
| B主任 | オールステンレス・・・それ建設の範疇こえてますなぁ。立派にミニコロニーですがな。 |
| D職員 | 実験目的の中にスペース・コロニーや宇宙ステーションの建設技術の開発もあったのですか? |
| B主任 | まさか、スペース・コロニーがステンレス製だとは・・・。 |
| D職員 | だれも、そんなこと言ってないですよ。そうかもしれないですが。 |
| H先生 | 物質循環をはじめとした環境科学の研究に使うのが第一の目的ですが、月面や火星での基地のテストベッドとしての役割も期待されています。また、公害を出さないゼロエミッション社会構築の研究などにも応用される可能性が考えられていますね。単に閉じこもって生活するだけではなく、酸素や水、植物、排泄物などもすべて施設の中で循環させるわけですから。 |
| B主任 | まさに小さな宇宙船地球号っちゅうわけですな。 |
| C主任 | それではその施設の各設備について教えていただけますか? |
| H先生 | まず居住区があります。人間2人までが生活ができるようになっていて、調理や食事、データ整理・・・ま、業務ですね。さらに排泄、睡眠などの設備が整っています。それから植物栽培区。ここでは温度や湿度、二酸化炭素濃度、光などがコントロールされており、稲など多品種の植物が育てられますね。動物飼育区では檻の中で動物を飼いました。大きく分けるとこの3つですね。 |
| D職員 | へぇ。動物も飼育したんですか。ちなみに何を? |
| H先生 | ヤギです。シバヤギという小型のヤギになります。この糞尿は、すのこ状になった床で分離できるようになっていて、自動的に回収と清掃ができます。もちろん動物だけでなく、人間の屎尿なども最終的には物質循環処理設備の湿式酸化処理で分解され、肥料に変える仕組みです。 |
| A部長 | こういった閉鎖実験施設というと、ほかには米国の「バイオスフィア2」が有名ですよね。 |
| H先生 | 「バイオスフィア2」は東京ドームと同程度の広さの閉鎖空間に、熱帯や砂漠といった地球上のさまざまな環境を人工的に作り出そうという壮大な居住実験でしたが、それに比べるとこのミニ地球は、はるかに小規模な実験ですよ。 |
| D職員 | その「バイオスフィア2」は失敗だったとよく聞きますが、何を持って"失敗"なのですか? |
| B主任 | それ「若さゆえのあやまち」とかのオチにしたいんやろ? |
| H先生 | 8人が2年間暮らした壮大な規模の実験でした。失敗だという人も多いですけど、ここでの実験が非常に大きな啓蒙になりましたし、私たちのミニ地球の設計にも大きく影響を与えているんですよ。 |
| A部長 | 確か最後は食糧不足になり、酸素の欠乏で施設を解放することになったんですよね。アリやゴキブリも大量発生したとか・・・。 |
| H先生 | いろいろな要素があったとは思いますが、一番の原因は、肉眼では見えない微生物をコントロールできなかったことですね。施設内には植物を育てるための土がたくさんありましたが、土壌の中の微生物が大量に酸素を摂取してしまうことまでは想定外だったみたいです。 |
| D職員 | 微生物がそんなに酸素を吸ってしまうんですね。知らなかったなぁ。 |
| H先生 | 東京ドームと同程度とはいえ、地球に比べればずっと小さいですから、ごく限られた空間を切り取ったことで生態系のバランスが維持できず、いつしか狂ってしまったんでしょうね。 |
| C主任 | あのドームの広さでもバランスを取るには足りないんですね。 |
| H先生 | どれぐらいの大きさがあれば十分なのかは不明ですが、環境を維持するには大きければ大きいほどいいと思いますよ。 |
| D職員 | その最低ラインがガンダムのスペース・コロニーの大きさだといいけどなぁ。でも、となるとジャブローというアマゾンの巨大地下空間はスペース・コロニーと同等以上の容積のはず、という説も成り立つかな? 最終的な閉鎖実験としてはですね。 |
| B主任 | われわれの仮説にとっては有利やな! |
| C主任 | 逆にスペース・コロニーのサイズが、ジャブローの大きさから決まったのかもしれない。 |
| A部長 | おもしろいねぇ。 |
| H先生 | 小さな空間の中で人間が生態系をコントロールしようというのは、現代の科学レベルではまだまだ無理があると言わざるを得ませんね。現状では少しでも大きな空間を確保して、その中でかろうじて生きていくぐらいしかできないです。 |
| C主任 | 自然を簡単に壊すことはできても、人間の都合良く生態系を作るのは難しいんですね。 |
| H先生 | 私たちの実験では「バイオスフィア2」での教訓を活かして土を持ち込まず、植物を育てるのは水耕栽培で行いました。 |
| F営業部全員:(細部に違いはあれど)ええっ! | |
| H先生 | 大根や人参のように可食部を肥大させるための土壌が必要な植物については、極小のセラミックボールで代用したんです。それを持ち込む際にも強酸で殺菌した上で施設に搬入するなど、微生物の徹底的な排除に努めました。 |
| B主任 | 土っちゅうのは思ったよりもアッガイ・・・じゃなかったヤッカイなしろもんですな。 |
| D職員 | (勝利の微笑で)めずらしいですね、関西人らしからぬベタな返し・・・。 |
| B主任 | キミのせいや。キミから何かが出ている・・・。 |
| H先生 | 確かガンダムでは、アムロの車がぬかるんだ道で動かなくなって、たまたま通りがかったシャアが助けるシーンがありましたよね。 |

| D職員 | はい! サイド6ですね。アムロさんとシャアさんが最初に対面する名シーン。シャアがこう言うんですよね「敵の士官を見てかたくなるのはわかるが、せめて礼の一言ぐらいは言ってほしいものだな…」 |
|---|---|
| B主任 | ・・・その微妙なモノマネはいらんがな。 |
| H先生 | ああいうシーンを見てると、スペース・コロニーにはちゃんと土があるんだ、微生物の問題が解決されてるんだって関心しますね。 |
| C主任 | うーん岩質調査の時もそうだったけど、技術者や研究者の方々は、着眼点が違うなぁ。 |
| H先生 | 私たちの実験の目的は地球環境を再現しつつも、閉鎖空間での炭素収支を重視していましたから、害虫や土の中の微生物といった、さしあたって不要なものはとりあえず排除する方向で実験を進めたんです。 |
| D職員 | 炭素収支を重視、ですか。 |
| H先生 | それでも水耕栽培で大根を育てていると、セラミックボールの畑から雑草が生えてくるんです。不思議でしたねえ、あれは。そこからどうやって雑草の種が入ったのか。入り込む余地はないはずだったんですがね。 |

| D職員 | 雑草魂恐るべしですね。ジムやボール好きな私としては共感するものがありますよ。いい話だなぁ。 |
|---|---|
| B主任 | 前々回の「ガンタンク放っておく」説に続き「ジム雑草」説かい。巨大な敵が増えてるで、敵が(笑)。 |

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