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2019年1月18日 (金)

【第六回】戸澗のSDガンダム30周年奮闘記(特別編!)SDガンダム外伝30周年記念「横井画伯インタビュー」

どのようにして「SDガンダム外伝」が誕生したのか?

――2019年は「SDガンダム外伝30周年」ということで、バンダイナムコグループ全体で様々な企画が動いているという話を聞きまして、今回は横井画伯とSDガンダム親善大使の戸澗さんに色々と聞いていきたいと思います。まずは30周年ということですが、どのようにして「SDガンダム外伝」が誕生したのでしょうか?

 

横井画伯(以下、横井) もう30年も経つんですね。当時は、カードダスが発売されて間もない頃でしたが、最初に発売したノーマルのSDガンダムカードダスがなかなか好調で、すぐに次の新しい展開も考えたいという話になりました。その時に出てきたキーワードが、当時子どもたちに大人気だった「RPG」で、それをモチーフにしたカードダスを出そうという話になりました。その時、雑誌の企画で8人目の武者頑駄無として描いていた「騎士ガンダム(武者Mk-III)」というデザインがあり、騎士ならばロールプレイングにピッタリだろうということで、彼が主役に決まり企画がスタートしたというのが、大雑把な経緯ですね。企画の骨子は、当時レイアップに所属していた桧山さんに作ってもらい、そこに登場するキャラクターを自分が描くことになりました。カードのデザインから、ヒットポイントなども桧山さんが決めてくれたので、こちらは絵を描くことに専念させていただきました。

 

戸澗 そうだったんですか、自分も初めて知りました。当時、自分は一生懸命カードを回しているだけでしたが、横井画伯自身がカードダスの人気を実感することはありましたか?

 

横井 会社ではずっと絵を描いているだけでしたので、あまり子どもと接することはなかったのですが、近所のカードダス自販機のところに「薬草」とかが捨てられているのを見て、売れてるんだなと思いました(笑)。描いている身としては複雑なところもありますが、そんなにダブるまで買ってくれているってことは、売れているんだなと。

 

――「SDガンダム外伝」で特に人気の「スペリオルドラゴン」がありますが、このキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか?

 

横井 騎士ガンダムと同じ雑誌の企画で、騎士ガンダムのパワーアップとして描いたのが最初です。騎士ガンダムが、金ピカの騎士になったらカッコいいんじゃないかと、ちょっと安直な考えですが…(苦笑)。でも発表後に玩具での発売もすぐに決まり、注目されるキャラクターになりました。一方、カードダスではすでに展開の予定が組まれていたので、すぐにスペリオルドラゴンを出すことができなかった。ですから、子どもからの投書で「スペリオルドラゴンはいつ出るんですか?」という手紙も届いていたようです。おもちゃの評判もよく、子どもたちの後押しもあったので、初登場から時間はちょっとかかってしまいましたが、カードダスでもジークジオン編のクライマックスの一番いいタイミングで騎士ガンダムの最終形態として登場させることができました。このジークジオン編の最終弾「光の騎士」は、売れ行きもよく、当時発売されていたカードダスの中で一番売れたという評価もいただけました。

 

――その「スペリオルドラゴン」も「SDガンダム外伝」シリーズを繋ぐ重要なキャラクターへと成長していきましたね。

 

横井 当初は最終形態なので、これで最後なんだろうというつもりで描いていたのですが、「聖機兵物語」の時に、また登場させたいという話が出てきまして……非常にありがたい話です。その後もそのような形で再登場が続いていき、いつしか神としての設定も固まっていったんだろうと思います。あと当時は、雑誌でマンガも連載していたので、そのマンガのために自分の独断で作ってしまった設定もあるんですよ。騎士ガンダムとサタンガンダムが同一の存在であるとか、騎士ガンダムの昔の姿が武者の一人であったとか……この辺は伴内弁太さんの思いとは、多少違うところがあったのかなと思います(苦笑)。どうしても、マンガを描いているうちにキャラクターが膨らんできてしまうんですね。とにかく描かないと終わらないし、締め切りもあるしという中でやっているので、刷り上がったマンガを見てからスタッフが驚くなんてことも多かったですね。事後承諾的に進めてしまったので、本当に申し訳なかったなと(苦笑)。そういった中で、スペリオルドラゴンの設定も横井設定とカードダス設定でなんか違うぞっていうのが出てきたのかな(笑)。

 

――武者頑駄無真悪参(ムシャガンダムマークスリー)だったのか? もともとスダ・ドアカワールドにいた神なのか? ということですね。今のような設定にまとまったのはいつ頃ですか?

 

横井 カードダスの復刻版の時ですね。2010年に「黄金神話」の復刻をしましたが、その時にどちらの設定とも矛盾がでないようにまとめ直しました。自分としては武者の世界で盾を盗んだ者が、別の世界で贖罪し浄化されたというか、よい行いをして神にまで上り詰めたということで作ってましたが、伴内弁太さんにとっては「もとからスダ・ドアカワールドにいた神」というイメージが強かったと思います。当時は、設定をまとめないといけないとは思っていなかったのですが、ある程度時間も経ち、復刻という機会も得られましたので、この2つの設定をうまくつなげることはできないかと思案してできたのが今の設定です。神という存在を、最初のガンダムになぞらえて、パイロットである「アムロ」、アムロが乗る「コア・ファイター」、そしてコア・ファイターが合体することで「ガンダム」となるという3つの要素に分ければいいのではないかと。大きいリアルタイプの体をガンダムとするならば、それに合体するコア・ファイターがスペリオルドラゴンの鎧、そしてその鎧を着る人、その3つが1つとなることで神として成立するということです。このアムロにあたる人が代替わりしていることにすれば、もともと神である設定も、武者であった設定も説明がつく。みんなが知っているスペリオルドラゴンは、武者が神になった姿とすると、そうなる前は誰だったんだろうと……。

 

――「SDガンダムクロニクル」(電撃ホビーマガジン2009年12月号付録小冊子)用に描き下ろした「黄金神スペリオルドラゴン」が、その初代のスペリオルドラゴンですね。

 

横井 そうですね。この「黄金神スペリオルドラゴン」は、当時のカードダスでも度々姿が出ていた「古の黄金神」に合体するスペリオルドラゴンとして描き下ろしました。これまで何度もスペリオルドラゴンを描いてきているので、今までに描いたことのないスペリオルドラゴンを描こうと思ってこの機会に描かせていただいたのですが、ちょうど『機動戦士ガンダム00』の放送直後ということもあってか、このスペリオルドラゴンがダブルオーガンダムに似ているという意見をいただきました。描いた時点ではそのつもりはなかったのですが、言われてみれば似てるかもしれないなぁと。そこからちょっとずつダブルオーガンダムを意識するようになりました。ちょっと時空がねじれますが『00』の年号は西暦だから、宇宙世紀よりも前の時代と考えることもできるので、ダブルオーガンダムがスダ・ドアカワールドの創世記にいるという設定もありかなと考えるようになりました。でも、まだその時点では『00』モチーフで展開しようという話もなかったので、「アルティメットバトル」などで創世記の勇者ガンダムのイラストを描かせていただく際に、ちょっとエクシア風味のデザインにしておこうとそれっぽく描いたりはしていました。

 

戸澗 その創世記のお話を、今回カードダスの「新約SDガンダム外伝 創世超竜譚」として描いていただけることになりました。

 

横井 そうですね。今回は『00』モチーフでやりましょうというお話なので、実現できてうれしいです。あのイラストからもう10年近く経っていますからね、本当に何が起こるかわからないですね。

 

戸澗 今回、スペリオルドラゴンのカードのテキストで、一人称が「俺」になっていますが、これはグラディエータガンダムエクシアのパーソナルな部分が出ているという感じでしょうか?

 

横井 皆さんがよく知っている二代目のスペリオルドラゴンが丁寧な口調だったので、びっくりした方も多かったのではないかと思いますが、別に悪い人という訳ではありません。BB戦士のマンガを描かれていた今石さんもよく言うんですが、礼儀正しい人というか収まっている人はお話では動かしにくいんですよね。俺とか言っちゃうタイプの方が話を進める上でもいいじゃないかと…刹那の「俺がガンダムだ」というセリフも印象的ですしね。

 

戸澗 今後バロックガンとの戦いもありますし、スペリオルドラゴンを主人公として立たせようとすると「俺」の方がよいという感じでしょうかね。

 

横井 そうですね。今までのスペリオルドラゴンは主人公という立ち位置ではなかったので、そこも大きく違うところになるかと思います。

 

――バンダイナムコエンターテインメントより配信されているiOS/Android「スーパーガンダムロワイヤル」と「スーパーロボット大戦X-Ω」などのゲームにもスペリオルドラゴンを取り上げる予定があり、横井画伯の方でも監修されているとお聞きしましたが…

 

横井 ちょうどSDガンダム外伝30周年シリーズを展開するにあたりバンダイカード事業部さんとスペリオルドラゴンまわりの設定を改めて再検証していたタイミングでしたので、ぴったりのタイミングでした。ゲーム用とのことでしたので主にセリフ関係を見させていただきました。こちらに登場するスペリオルドラゴンは、騎士ガンダムの延長線上の人なので礼儀正しい人ですね。そして、神に近くなっていっているので高潔な人なんだろうと思います。Nintendo 3DS「スーパーロボット大戦BX」の時にも思いましたが、新しい映像、新しい音声で、今まで見たことのないSDガンダムが見れるということ自体が喜びですね。お客さん目線で本当に楽しみにしています。

 

戸澗 過去に「スーパーガンダムロワイヤル」などで騎士ガンダムシリーズを実装した際の評判もよかったので、この30周年のタイミングでカードダスと共に「SDガンダム外伝」をもっと盛り上げていきましょうという話になりました。そこで、今回は参戦済みタイトルでのボイス実装に加えて、複数のタイトルでスペリオルドラゴンが登場し、動きまくると聞いてますので、そこも非常に楽しみです。

 

横井 そうですね。外伝世界では最強の存在のスペリオルドラゴンは登場するまでが大変で、登場すればもう勝利となってしまうため、あまり自分で戦うという印象がないんですよね。アニメでもあまり動いた姿は出てきていないので、どのように動くのか非常に楽しみですね。

 

戸澗 「スーパーロボット大戦」シリーズでいうと、別作品世界の神様とも戦うことになりますからね。

 

横井 それはそれで楽しみですね。

 

――「SDガンダム」はテレビアニメではなく、玩具やボンボンがメインの媒体になるというめずらしいコンテンツでしたね。

 

横井 そうですね。でも今思うとテレビアニメがなかったから良かったのかもとも思います。テレビアニメがあると、その映像のイメージで統一されてしまいます。しかし、SDガンダムはOVAがありましたが、カードダス、ガシャポン、BB戦士、元祖SDガンダム、ファミコンのゲーム、マンガなど様々な展開をしていたので、それぞれのファンの子どもたちが、それぞれの頭の中に映像を描いていたんだと思います。それぞれが思い描く最高の映像が頭の中にあるから、どんな映像よりもカッコよく写っていたんじゃないでしょうか?

 

――それぞれが思い描く最高の映像っていいですね。正解がないなら、それぞれが思う自分の正解を楽しめるといいますか……最近はSDのスタイリングも広がっていますが、それにも同じことが言えますかね。

 

横井 そうですね。それぞれが好きなものを選んで、それが自分のSDガンダムだって思ってもらえているからうまくいっているのかも知れません。SDのスタイルはこうであるというのを決めていなかったから、ここまで広がったのかもしれないですね。

 

――なぜ、SDの明確な定義のようなものを作らなかったのですか?

 

横井 そもそも自分は“ガンダム”というキャラクターを使わせてもらっているだけなので、こちらからはこうですというのは、とても言えた立場ではないです。なので自由に楽しんでもらえればいいと思います。自分の絵柄もその時々で変わっていきますし…。

 

――最後にファンの方へ向けてコメントをお願いします。

 

戸澗 まずはSDガンダム外伝30周年記念として「新約SDガンダム外伝 創世超竜譚」をシリーズ展開していきます。これまで謎だった勇者ガンダム、スペリオルドラゴンの物語に注目してください。こちらの第1弾にあたる「新約SDガンダム外伝 創世超竜譚 黄金の勇者伝説」はプレミアムバンダイにて1月29日(火)23:00まで予約を受け付けていますので、そちらもお見逃しなく。

そして、記念すべきSDガンダム外伝30周年ということで、このシリーズのほかにもバンダイナムコエンターテインメントさんとともに外伝全体を盛り上げていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

横井 「創世超竜譚」は創世記の話なので、昔の外伝のようにゆっくりとした雰囲気で描けたらいいなと思っています。どうしても線が多くなってしまうので…(苦笑)。そして、外伝シリーズでは一番昔の話になるので、これまでの「新約SDガンダム外伝」を知らない方でも入っていける話になっております。昔の騎士ガンダムを知っている人なら、なおさら楽しめる内容になっていると思います。そして、今年はいろいろなところで新しいスペリオルドラゴンの姿が見られると思いますので、楽しみにしていてください。

 

 

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